2017シーズンを振り返って

非日常的な体験と故郷チームの応援を求めて、北海道コンサドーレ札幌の現地参戦を始めたのが2016年8月。戦力の引き留めと堅実な補強も実現し、期待の持てる状態でJ1参戦を決めた2017シーズンは可能な限り現地参戦すると決めた。しかし仕事等が重なり開幕の仙台戦と横浜FM戦は観に行けずDAZNの見逃し配信で視聴、いずれも善戦しながらも完封負けを喫した。続くホーム開幕戦、C大阪戦ではエース都倉の今季初得点が生まれ、引き分けに持ち込み初めて勝ち点を得ることに成功。間に挟んだルヴァンカップ磐田戦では小樽出身のルーキー菅が2アシストの活躍を見せ公式戦初勝利、続く広島戦ではリーグ戦初勝利と、着実に上昇気流に乗ってきたなかで迎えたアウェー甲府戦が、私の今季初現地観戦となった。
上昇気流による高揚は長くは続かなかった。前半14分で深井一希が大怪我、不測の事態のなか浴びた兵働昭弘のスーパーゴールは痛恨だった。0-2で敗れた後の甲府盆地の寒さと、帰りのバスでの暗い気持ちは、これから始まる長いアウェートンネルを暗示していたかもしれない。


ホームに戻ると調子を取り戻し、FC東京戦と川崎F戦を1勝1分で乗り越える。アウェーに戻り、好調浦和戦に参戦。2-3で敗れるも兵藤と福森のゴールで食い下がり、甲府戦よりも遥かに希望を感じる内容だった。アウェー指定席でゴールが決まるたびに立ち上がって歓声を送り、憮然と静まり返る浦和のスタンドを眺めるのは、なかなか味わったことのない、誇らしい感覚だった。

 


続く磐田戦は仕事が重なり不参戦。ドローに甘んじるもアウェーで2点を先行し、調子の良さを感じた。ゴールデンウィークのホーム大宮戦は札幌出張に乗じて参戦、自分の座ったアウェー側の赤黒サポーターゾーンからはよく見えなかった宮澤のゴールにより、リーグ戦では初の完封勝利。この試合でようやくタオルマフラーを購入した。


この後、札幌は6連敗を喫することになる。そのうち新潟戦、鹿島戦は現地参戦。新潟戦ではホニの宙返りを見せつけられ、鹿島戦での前半立て続けの3失点は、最近の調子の良さも吹っ飛ぶ完敗ぶりであった。鳥栖戦は新潟戦との兼ね合いで不参加、柏戦は親戚の結婚式と重なり不参加。ただ、大崩れすることはなかった。完敗はしたものの、4点も5点も入れられるような大敗はなかった。また、他の下位のチームも勝ち点を稼ぎあぐね、常に札幌の下に2チーム以上居る状態だったことが、メンタル的にも底を見ずに済んだ理由だったと思われる。


ホームに戻り、清水戦は1-0で久しぶりの勝利。この日は土曜出勤が入ってしまったが、序盤にヘイスのゴールが決まったことを確認して心中歓喜。その後試合終了までがひたすら長かったのを良く覚えている。そして、今シーズン一、二を争う伝説の一戦、大宮戦。参戦する気満々だったがNACK5スタジアムの狭さを知らず、チケットが取れず自宅でDAZN観戦で我慢。2点を先行されて絶望したが、福森が81分、試合終了間際の90+6分とFKから2ゴールを叩き込み引き分けに持ち込んだ。負けていれば大宮と入れ替わりで降格圏に落ちて中断期間を迎えることになっていたのだが、ここを凌げたことが両チームのメンタルに決定的な差をもたらし、結果的に残留/降格とシーズン後の明暗を分ける結果につながったと言っても、決して過言ではないと思っている。そしてこの中断期間にチャナティップ、ジェイが加入。選手層の厚みを増し、数々のキャンペーンを打ってシーズン最多入場者数を稼いだ浦和戦を迎えた。この試合、2-0で勝利したという結果だけを見ると、浦和が調子を落としがちだったとはいえ、なかなかのミラクルである。チャナティップがいきなり先発、都倉が先制、槙野が退場、後半開始と同時に浦和が三枚替え、すぐさま那須が負傷し9対11の状態に、最後に小野のクロスからジェイが追加点。普段起こり得ないことが矢継ぎ早に重なっていく様は、アウェー大宮戦のミラクルのホーム・ヴァージョンと言うことができるかもしれない。そしてその2ミラクルが連続して起こった7月は、異常に濃密なシーズン中間地点だったと言える。
そんなミラクルが長続きしないのは十二分に承知しているが、少しは期待してしまうのが人間というものである。私は次のアウェーC大阪戦に遠征し、1-3で鹿島戦に近い完敗を目にした。内容をよく見れば鹿島戦ほどはやられていないのだけど、前半だけで3失点はやはりこたえる。ただこの試合は後半にチャナティップのアシストから菅がゴールを決めるという絵を見れただけでも救いがあった。結果的にチャナティップのスコアポイントは今季これが最初で最後となり、それを生で観られたというのはなかなかの価値があったと思える。


 夏の帰省に合わせて、ホームの二連戦はどちらも参戦。浦和戦のキャンペーンで配られた2WAYTシャツが売られていたので購入。タオルマフラーと合わせて、仮初めながら赤黒観戦スタイルが様になってきたが、横浜FM戦は都倉退場を含む完封負け。甲府戦はジェイのゴールこそアウェー寄りバックスタンドの目前で見られたものの、ドロー。これが今季最後の札幌観戦となったので、次にドームに来るときもJ1であってくれ、と祈るような気持ちで新千歳に引き返したけど、結果的に祈りが報われる結果となって本当に良かった。


その後の川崎戦は友人とともに参戦。キックオフの笛と雷鳴が同時に鳴り響くような大雨の中の観戦は、サッカー初観戦の友人にはあまりに可哀想とも思ったが、1-2の試合結果はなかなかスペクタクルで見応えがあったようだ。大雨と戦いながら目前で決まったヘイスのゴールは、谷口とチョンソンリョンのミスが重なる非常に珍しいケースから生まれ、後で家で見返すとその無茶苦茶さはなかなか笑えた。


ホームに戻ると仙台戦はヘイスのゴールで清水戦を思わせるウノゼロ勝利、続く磐田戦は都倉とヘイスのゴールで逆転勝利と、浦和戦のミラクルをフロックとすまじと上位相手に勝ち点を稼げるようになってきたことが、これを続けられれば残留できる、と思える要因だったと言える。当時の心境といえば、残留争いの相手に勝ち点を稼ぐ星勘定ばかりだったと言えるからだ。他の下位チームのサポーターもそうであったと思う。そういうなかで中〜上位相手に勝ち点を稼げることがいかにメンタルにプラスに作用することか。逆に甲府、新潟といったチームに勝てなかったのは、負けられない気持ちで向かってくるチームとの対戦がいかに難しいかを如実に表している。
これだけチーム力が付いてきても、未だアウェーでは勝てない。神戸戦に参戦したが、前半4分にポドルスキのシュートのこぼれ球を田中順也に押し込まれるなどし、0-2の完封負け。とにかくアウェーは立ち上がりが悪く、失点の時間があまりに早い。


続くホーム新潟戦は2点を先行するも終盤に追いつかれドローに甘んじる。DAZN観戦しながら思わず何やってるんだ!と怒ってしまったが、札幌に同じように追いつかれた7月の大宮のダメージを思い返すと、そこまでひどく思う必要もないと開き直れたことを覚えている。
神戸に続く西日本への遠征でそろそろ疲れてきた頃の広島戦。この試合はお互いにPKを決め1-1のドローに落ち着くのだが、自分にとっては大きな結果だった。今季アウェーに数々乗り込んだ自分にとって、初めて「負けなかった」。遠い地までやってきて負けることが当たり前になってしまっていた中で、PKだけという試合としてはつまらないと言ってしまえそうな内容だったとしても、初めて勝ち点を得たという事実は、とても大きく、晩酌から翌日の帰京まで充実した気持ちが続いた。そういえばエディスタから広島駅までのバスで札幌サポと広島サポの会話が聞こえたが、広島サポの方はこの後強豪との試合ばかりでお先真っ暗、と嘆いていた。確かにここから広島は大苦戦をするのだけど、そこから最終的に残留して見せたのはさすがの底力である。


ここからの札幌のジェイの快進撃は、今更触れるまでもないだろう。中断期間を挟んで迎えた上位の柏戦、なんと3-0の勝利。相手GKは今をときめく日本代表中村航輔。急造のDFラインを配した采配を含め、優勝の可能性が消失した柏サポは怒り心頭だったようだが、ともかくジェイを中心とした攻撃が見事にはまったことが、結果的に札幌の残留を決定づけることになる。
続くアウェーFC東京戦を2-1の勝利で乗り切り、遂にアウェー初勝利を挙げた。特にジェイの1点目をゴール裏から見たときの、目前でシュートがスルスルとゴール脇に吸い込まれていく絵は決して忘れない。あの日は試合前のコレオや試合後のチャントも含め、札幌サポとしての充実感では今季一の試合だった。


ホーム鹿島戦は兵藤のスーパーゴールで食い下がるも首位相手は1-2でさすがに敗戦。
次のアウェー清水戦が今季最後の現地観戦となった。この試合もジェイの2ゴールで勝利し、札幌は残留を決めた。今季最も大きな成果を上げた場で感じる喜びがFC東京戦よりも控え目だったのは今でも少し不思議なのだけど、それくらい、現地観戦の喜びというのは即物的で、長期的な目標達成よりも、目前でゴールが決まったとか(確かに清水戦のゴールはいずれも清水側ゴールに決まった)、アウェーで初めて勝利したとか、そういう瞬発的な喜びの方が実感は大きいということなのかもしれない。もちろん残留の喜びが小さかったと言っているのではなく、そちらの達成感はむしろ後から感じられるものであったということ。その達成感はその日の夜にようやくじわじわと実感が込み上げ、そして次のシーズンを見据える今このときまで繋がっている。


吹田は是非行ってみたかったものの仕事の繁忙期と丸かぶりで行けず。そしてこのG大阪戦も札幌の勝利。最終戦のホーム鳥栖戦も、ジェイのスーパーゴール、都倉の久しぶりのゴール、横山の劇的決勝弾で3-2で競り勝った。札幌は勝ち点43という出来過ぎの結果で、過去最高タイの11位でシーズンを終えることとなった。
公式発表はまだだが、来季は四方田監督はヘッドコーチとなり、ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任すると報じられている。札幌サポが賛否両論なのも分かるけど、今はこの決定を支持したい。札幌の今季のスタイル、私は大好きだ。並行して観てきた日本代表のチームスタイルがポゼッション志向に偏り過ぎていた時代あたりから、パスをつないでボールを失わないことや、ゴール前を綺麗に崩すことに重きを置きすぎ、結果的に一番重要である「得点」ができないことにフラストレーションを溜めていた自分としては、札幌の明快なスタイルは一つの答えだった。最終ラインの福森が中盤省略の正確なロングボールを都倉やジェイに当てる。それだけで上記FC東京戦のようなゴールが生まれる。セットプレーも上手い(セットプレーの守備ももう少し上手くなってほしいのは高望みだろうか。もっとも高身長の選手が多いから、相手のセットプレーもそう簡単ではないが)。ミシャに変えるということは、そのスタイルを半ば捨てるとも言える決断である。でも、序盤の戦術都倉が途中対策されたり、戦術ジェイが鹿島に通用しなかったりと、必ずしも上手く行く万能の杖でないことを早期に悟った上での判断なのだろう。チャナティップをはじめとした選手がより活きるコンビネーションが生まれ、一方でセットプレーの上手さも持ち続け、両者を使い分けることのできるサッカーができれば理想的である。時間はかかるだろうけど、札幌が中上位を目指すために必要な転換であり、予想よりもそのチャンスが早く来た、ということである。時期尚早という意見も十分同調できるが、チャンスがある以上そこに向かうという姿勢を否定する理由はないし、挑まずに失敗するよりは挑んで失敗すべきだろう。もちろん成功を見たいが。失敗しても、札幌は2012シーズンに一度底を見ているわけで、また這い上がる術とメンタルは他チームに劣らず持っているはずである。今は大きな変革な年となるであろう2018シーズンを、1年前にも似た期待と不安の入り混じったような気持ちで、待ち続けるのみである。f:id:batasan:20170809183459j:plain